2026年5月の方向転換
2026年5月5日、Krutrimは自社を「国内特化のAIクラウドサービス事業者」として再定義したと発表しました。同時にFY26の決算も公表しています(Analytics Insight(プレスリリース))。
Ola創業者Bhavish Aggarwal氏が立ち上げた、インド初の生成AIユニコーンです。自社LLMとAIチップの両方を掲げていた会社が、GPUを貸す側に回った。これは単独企業の話ではなく、インドのAI産業がどこで稼げるかという答え合わせでもあります。
数字
- FY26の売上は約300億ルピー(₹300 crore)で、FY25の約3倍。
- 初の通年純利益を計上し、税引後利益率は10%超。
- 外部資金の当面の必要はなく、財務的に自立していると会社側は説明しています。
(いずれもEntrepreneur India および上記プレスリリース。会社発表の数字であり、第三者による監査結果ではない点に注意が必要です。)
GPU計算能力には外部からの強い需要があり、その大半はすでに25社を超える大企業顧客に割り当て済みだとされています。
何を捨てたのか
転換の前に、2025年後半の事業再編がありました。資本と人材をチップ設計から引き上げ、AIクラウドのスタック構築に集中させるため、チップ設計の取り組みは一時停止されたと報じられています(Lets Data Science)。
人員削減も伴いました。報道によって数字が異なり、過去1年で150人超とするものと、複数回にわたり200人超とするものがあります。消費者向けアシスタント「Kruti」は各プラットフォームで提供停止となりました(Analytics Insight、Yahoo Finance)。
日本から見た示唆
正直なところ、ここがこの解説で一番重要です。
インドのAI企業と話すとき、「モデルを作っている会社」と「計算基盤を売っている会社」はもう別のレイヤーです。Krutrimは後者に移りました。半導体の話をしに行ったのに相手はデータセンターの話をしている、という噛み合わなさは、この転換を知らないと起きます。
そしてもう一つ。チップ設計を止めてクラウドに寄せるという判断は、資本の重さが理由です。日印の半導体協業を考えるとき、インド側で「自前のチップを設計し続けられる体力がある主体は誰か」を見極める材料になります。
TODO(Ved): Krutrimのチップ設計が再開されたかどうか、2026年後半の続報を確認する。