UPI と ONDC — インドの公共デジタル基盤が日本に示すこと
UPI and ONDC: what India Stack's public rails mean for Japan
2026-10-26 ・ 出典リンクつき All claims linked to sources
UPIの10年
UPI(Unified Payments Interface)は2026年に10年を迎えました。取引件数は約13,000倍に増え、FY2025-26には24,162 crore件(約2,416億件)を超えています。FY2016-17の1.78 crore件からの伸びです(Outlook Business 、Free Press Journal )。
月次で見ると、2026年7月が過去最高で236.6億件・29.88 lakh crore ルピー。前月比で件数4.1%増、金額3.3%増、前年同月比では件数22%増・金額19%増でした(Swarajya )。
内訳も示唆的です。対事業者(P2M)の取引が件数の63%を占める一方、金額では個人間(P2P)が71%を占めます。小口の支払いが日常に入り込み、大口は個人間に残っている、という二層構造です(Free Press Journal )。
設計思想 — 「アプリ」ではなく「線路」を作る
ここが日本にとっての本題です。
UPIが伸びたのは、特定の決済アプリが勝ったからではありません。誰でも乗れる共通の線路を公共側が敷き、その上でアプリ同士を競わせたからです。銀行もフィンテックも同じ規格に接続する。利用者はアプリを乗り換えても、送金先は変わらない。
日本のキャッシュレスが「どのQRコードか」という競争になりがちなのと、構造が違います。良し悪しの話ではなく、どこに公共性を置くかという設計判断の違いです。
ONDC — 同じ発想をeコマースに
ONDC(Open Network for Digital Commerce)は、この発想を商取引に広げる試みです。買い手アプリ、売り手アプリ、ゲートウェイ、物流事業者、金融サービス事業者という5つの役割に分解し、それぞれが相互接続できるネットワークにする、と説明されています(PDP Spectra )。
公式に近い数字として確認できるのは2024年時点のものです。2024年7月の発表で、各カテゴリ合計1,200万件の注文、1日あたり43万件。売り手・サービス提供者は63.8万、609都市以上をカバーし、10ドメイン・108の参加事業者が稼働していました(Apparel Resources India 、indbiz.gov.in )。
2025年1月1日からは、250ルピーを超える注文に対し1取引あたり1.5ルピーの手数料が導入されました。対象は物流・金融を含む売り手側のネットワーク参加者です(Inc42 )。無料で広げる段階から、ネットワークを維持する段階に入ったということです。
TODO(Ved) : ONDCの2026年時点の月次注文数・参加事業者数を、ONDC公式のNetwork Insights(https://resources.ondc.org/network-insights)で確認して差し替える。本稿では2024年の公式数字と、2026年に月間約1,200万件とする第三者ブログの記述しか確認できていない。
日本から見た示唆
規格を公共が持つと、競争の場所が変わる。 UPIでは、競争はアプリの使い勝手に移りました。参入のコストが下がり、結果として件数が伸びています。
普及と収益化は別の時計で動く。 ONDCの手数料導入は、ネットワークが「広げる」から「支える」に移る局面を示しています。日本で同種の基盤を考えるなら、この順番は参考になります。
日印の協業では、接続先が「アプリ」ではなく「ネットワーク」になる。 インド市場に入る日本企業にとって、提携先を1社選ぶのではなく、規格に接続するという選び方があり得ます。